今年(2018年)の4月に京都府舞鶴市で開催された大相撲舞鶴場所でアクシデントが発生しました。土俵上であいさつ中の市長が突然倒れ、偶然居合わせた女性看護師が救命処置を行い市長は一命を取りとめたということです。
この出来事はニュースやワイドショー等で大きく取り上げられ、女性が土俵に上がる是非についての議論が毎日のように放送されました。ここではそれらの議論は置いておいて、少し違う視点からこのニュースを見てみたいと思います。
今回は「観客の中に医師がいる確率」についての話です。
とあるイベント中に急病人が発生し、偶然居合わせた医師が介抱して事無きを得る、というようなニュースは国内外で数多く報道されています。このような状況で、実際に観客の中に医師がいる確率はどのくらいになるのでしょうか?
計算してみました。(あくまで計算上の確率なので実際には誤差が出ることがあります)
観客の中に医師がいる確率
日本人を無作為に1人選んだ時、その人が医師である確率は(日本の医師数)÷(日本の人口)で求められます。日本の医師数は厚生労働省のサイトによると約32万人、人口は総務省統計局のサイトによると約1億2700万人となっています。
32万÷1億2700万≒0.002519
日本人を無作為に1人選んだ時その人が医師である確率は約0.25%となります。なかなかの低確率です。
次にこの確率を使用して実際に観客の中に医師がいる確率を求めます。
2018年大相撲舞鶴場所での観客数は約3000人(実行委員会事務局のサイトより)
観客3000人の中に医師が1人もいない確率は
(1-0.0025)^3000≒0.00054791485(約0.055%)
観客の中に医師が少なくとも1人いる確率は
1-0.00054791485≒0.99945208515(約99.95%)
なんとほぼ100%という結果になりました。
ただ観客数約3000人という数字は、おそらくチケットの売上を元に発表されたものだと思われます。途中で帰ったり、遅れて来たり、何らかの理由で行けなかった人等を考えると実際に会場にいた観客数はもっと少なかったはずです。
そこで観客数を半分の1500人として計算してみると
1-(1-0.0025)^1500≒0.976592(約97.66%)
これまたほぼ100%です。
観客数とその中に少なくとも1人医師のいる確率を表にすると次のようになります。(観客は全て日本人、無作為に1人選んだ日本人が医師である確率0.25%という条件で計算)
観客数 | 確率(%) |
---|---|
1 | 0.25 |
10 | 2.47 |
100 | 22.14 |
200 | 39.39 |
300 | 52.81 |
500 | 71.39 |
750 | 84.70 |
1000 | 91.81 |
1500 | 97.66 |
3000 | 99.95 |
観客数をさらに半分の750人として計算したとしても約84.70%です。これを見ると「思っていたより高い確率」と感じる人が多いのではないでしょうか?
「お客様の中にお医者様はいらっしゃいますか?」は一応理にかなっている
映画やドラマの飛行機の中でCAさんが「お客様の中にお医者様はいらっしゃいますか?」と声をかけると偶然医師が乗り合わせている、というシーンがよくあります。
「そんな偶然あるわけないよ」とツッコミを入れたくなると思いますが、実際に計算してみると、それほどありえない確率ではないことが分かります。
例えばボーイング777-300 (773)の場合で考えてみます。
ボーイング777-300 (773)の座席数は約500席あります。仮に満席だとしたらその中に医師のいる確率は上の表から約71.39%になります。これはかなりの高確率といって良いでしょう。偶然医師が乗り合わせていたとしても、それほど珍しいことではないということです。